ようこそ、弁護士 石井 浩一のブログへ

日々思ったこと、皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。
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取調べの録音・録画

最高検察庁から全国の高等検察庁、地方検察長に対し、在宅のまま捜査する事件のうち、起訴が見込まれ供述が立証上重要なものや、取り調べの状況をめぐって争いが生じる可能性があるものについて録音・録画を試行するよう通知がされたようです。

 

取り調べの録音・録画は、身柄拘束されている事件、つまり逮捕、勾留されている事件について行われていましたが、この対象を拡大するということです。

取り調べは、密室で行われるため、警察官や検察官による威圧的な取り調べやミスリーディングな取り調べにより誤った内容の供述調書が作成されることがありました。

これが冤罪の原因となっているということで、取り調べの録音・録画が法律により義務付けられましたが、その対象は身柄拘束されている事件に限定されていました。

その後も、警察官や検察官による不適切な取り調べが相次いだことを受けて、在宅事件にも対象を拡大するに至ったようです。

 

取り調べの録音・録画がされていてもなお、不適切な取り調べが行われており、今回の拡大を受けてもなお、不適切な取り調べが完全になくなるとは思いませんが、一定数、減少することは期待できるのではないかと思います。

弁護士としては少しでも冤罪が少なくなればと思います。

精神医学

刑事事件では、精神鑑定が行われることがあります。

そのため、刑事事件に携わる弁護士は、精神鑑定について知っておくと有益だと思います。

 

先日、精神医学に関する研修を受講しました。

東京都立松沢病院の精神科医の先生が講師を務められており、精神医学、鑑定についての見識を深めることができました。

精神鑑定の際、精神科の先生がどのようなことを意識しているか、どのような事情から鑑定を行っているかなどを知ることができ、とても有益でした。

 

妄想にも種類があり、それが鑑定において意味を持つこと、病気と思われるものでも一部はその人の人格で説明できてしまうことなども指摘されており、専門家でも理解が容易でないことが分かり、精神医学の難しさを感じました。

また、精神科医によって、どういった点を重視するかが異なること、法律でも同じことがありますが、考え方が複数あり、いずれの考え方に立つかで結論が異なる可能性があることなどがあることなどが指摘されており、鑑定の難しさもわかりました。

どの鑑定人に当たるかによって結論が異なってしまうという不安定さがあるという問題はあるものの、実務上鑑定結果が重要であることは間違いないため、弁護士としては、これらのことを踏まえながら、対応していかないといけないなと思いました。

 

無罪判決

こんにちは。弁護士の石井です。

刑事裁判で、犯罪事実が認定されないときに、無罪判決が出されます。

以前に比べると、無罪判決のニュースをみることが増えたように感じます。

 

刑事裁判では、合理的な疑いを入れない程度の証明が求められ、この証明責任を検察官が負っています。

具体的には、裁判官が、通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることができた場合に有罪判決が出されます。

無罪判決が出されるということは、検察官が、刑事裁判で求められる程度の証明ができなかったということです。

証明ができなかった理由は事件ごとに様々ありますが、十分な証拠がなかった場合がその一つとして挙げられます。

どこまでの証拠があれば、証明の程度として十分かということは、一概には判断できませんが、少なくとも、起訴して刑事裁判とした以上、検察官としては十分な証拠が揃っていると判断していたはずです。

それにもかかわらず、無罪判決が出されるということは検察官の見立てが結果論ではありますが間違っていたということになります。

 

証明は、刑事裁判だけでなく、民事裁判でも求められるものです。

ただ、刑事裁判で求められる証明の程度は、民事事件において求められる証明の程度とは異なっており、刑事事件で求められる証明の程度の方が重くなっています。

無実の人が、誤って有罪とされ、処罰されることを防ぐために、このようなルールが設けられています。

無実の人が処罰されることのないようにしないといけません。

 

 

 

 

日本版DBS法

先日、社内の研修で日本版DBS法について勉強しました。

日本版DBS法は、子供に接する一定の仕事に従事する業務について、事業者が、雇用等する人に性犯罪歴がないかを照会できることを定めた法律です。

日本版とされているのは、もともとイギリスの制度であるDBS制度を参考に作成されているからです。

具体的な対象事業は、学校や民間の教育、保育事業等であり、対象となるのは、教師、保育士、塾講師等です。

対象となる犯罪は、特定性犯罪とされており、一部の犯罪に限定されています。

また、いわゆる前科と呼ばれるものに限定され、不起訴処分となったものについては、対象外とされています。

この辺りは、どこまで対象とするか等について、議論がなされています。

 

犯罪歴の確認は、こども家庭庁に対して行います。

こども家庭庁は、法務大臣に照会し、法務大臣からの回答を得て、書面で事業者に回答します。

犯罪事実がない場合には、そのまま事業者に回答が出されますが、犯罪歴がある場合には、事前に対象者本人に事前通知がなされます。

事前通知を受けた対象者本人が、事前通知を受けて内定辞退する等した場合、事業者の申請は却下され、回答書面は不交付となります。

 

制度開始直後は、該当する可能性のある事業者の方から、弁護士への問い合わせが増えるかもしれませんので、企業法務を担当する弁護士は、おさえておいた方がよいように思います。

CPA会議

医療観察法による入院措置が取られた場合、2から3か月に1度程度、CPA会議が開催されます。

CPA会議は、ケア会議とも呼ばれており、病院側と地域の担当者や家族とが会議をし、情報共有を行ったり意見交換を行ったりします。

弁護士の業務の1つである後見業務を行う際、このCPA会議に参加することがあります。

 

入院措置の期間は、ガイドラインによれば急性期3か月、回復期9か月、社会復帰期6か月とされているようであり、総期間18か月を想定しています。

ただ、私が参加したCPA会議での医師の話によれば、18か月で終了することが多いわけではなく、それ以上の期間になることが多いようです。

 

CPA会議では、看護師、医師、心理士、作業療法士等の専門家や、社会復帰調整官等の地域の担当者が参加し、現状の治療状況や今後の見通し等について共有されます。

最終的には退院し、地域で生活をしていくことになるため、退院に向けた環境の整備等の情報も共有されることがあります。

入院先の病院が必ずしも各出席者の近くにあるとは限らないため、移動時間等も含め拘束時間はかなりの時間になることがあります。

それでも、関係者が一堂に会することで情報共有が図られ、意見交換もできるため、有益だと感じます。

労働審判手続き

使用者と労働者との間の労働関係におけるトラブルを解決する手段の一つに、労働審判という手続きがあります。

東京地裁の民事第19部では、労働審判事件を取り扱っています。

労働審判手続きは、原則として3回以内の期日で終了するため、比較的短期間で結論が出るため、紛争の早期解決に適しています。

第1回期日で終了することも多く、最近対応した労働審判事件の中にも、第1回期日で終了した件があります。

 

労働審判手続きは、通常、労働者側が裁判所に申立書を提出して始まります。

申し立てられたのちに、裁判所から会社側に申立書が送られます。

申立書が送られてからおおむね1か月後に第1回期日が設定されます。

申し立てる労働者側は、比較的準備をする時間を長くとれるのに対し、会社側は比較的短期間で準備をしなければならない、ということです。

特に、会社側は、問題の存在自体を明確に認識していなかったり、時間が経過してしまって当時のことを知っている者が退職してしまったり忘れてしまったりしていることもあり、情報を整理するだけでも相当に困難なこともあります。

 

第1回期日では、申立書と、会社側が提出した答弁書や証拠等をもとに議論がされます。

事実関係の確認や主張の明確化などが行い、双方の主張の一致する点、一致しない点などを明確にします。

かなり細かな事実関係が確認されることもあるため、事実関係については、詳しくかつ正確に把握しておく必要があります。

これがうまくできないと、事実関係が正確に労働審判官や労働審判員に伝わらず、不利な認定をされてしまうことがあります。

 

お互いの書面や主張をもとに、お互いの合意できる点をすり合わせ、合意できるようであれば合意が成立し、合意内容が労働審判手続期日調書に残されるなどして終了します。

合意できない場合には、審判が出され、同様、その内容が労働審判手続き期日調書に残されるなどして終了します。

指定入院医療機関

精神疾患を抱えた人が、その精神疾患を原因として事件を起こしてしまった場合、医療観察制度という制度が利用されることがあります。

 

最終的に必要と判断されれば、入院または通院の決定が出されます。

この制度に基づく治療を行う機関として、指定入院医療機関があります。

東京都内の指定入院医療機関としては、国立精神・神経医療研究センター病院や、都立松沢病院があります。

 

指定入院医療機関に入院中は、状態に合わせた治療が行われます。

治療過程は、急性期の治療、回復期の治療、社会復帰期の治療などに分かれます。

どのように治療していくかについては、病院の担当チームや家族、社会復帰調整官等を交え、CPA会議と呼ばれる会議等で決められます。

状態が回復するまでの期間は個人差があるため、一概には言えませんが、1年以上かかることも多くあります。

 

入院治療中は、6か月ごとに裁判所が退院か入院継続かを判断します。

退院できる状態になっていると、裁判所の許可により退院となりますが、その後も、原則3年間の通院による治療継続が予定されています。

退院後の社会生活については、社会復帰調整官とも相談して決められます。

 

通院治療の状態を踏まえて、裁判所が最終的に処遇終了決定をすると、治療が終了します。

医療観察法の入院処遇

こんにちは。弁護士の石井です。
心神喪失の状態等で重大な他害行為を行った者に医療を提供する制度を定める法律として、いわゆる心神喪失者等医療観察法という法律があります。

この法律は、心神喪失や心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った人について、検察官が不起訴処分をしたり、裁判所が無罪としたりした場合に、その人について適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としたものです。

対象となる重大な他害行為は、殺人、放火、強盗等です。

 

医療や観察を受けさせるべきかどうかは、検察官の申し立てにより、裁判所が判断して決定します。

検察官の申し立てがあると、通常、裁判官が鑑定入院命令をします。

鑑定入院命令がされると、対象者は、指定医療機関に入院し、鑑定を受けます。

入院期間は2か月以内とされますが、1か月延長されることがあります。

 

鑑定の結果等を受けて、裁判所が審判をしますが、審判に際しては、裁判官と精神科医(精神保健審判員)からなる合議体により判断されます。

審判の結果医療観察法による医療の必要性が認められる場合には、入院決定または通院決定がなされます。

入院決定を受けると、指定医療機関に入院し、専門的な医療を受けることになり、裁判所の退院許可が出るまで入院が継続されます。

通院決定を受けると、原則として3年間通院して医療を受けることになります。

通院期間は2年を超えない範囲で延長されることもありますし、状態によっては入院に移行する場合もあります。

 

代表取締役不在の場合の会社の自己破産

会社の代表者が不在のため、会社の破産手続きができず困ってしまっている方が時々います。

そのような場合、準自己破産という手続きが利用できる場合があります。

 

準自己破産は、法人の役員等の申し立てにより行われる当該法人の破産手続きのことです。

本来、会社の自己破産は、会社の代表取締役等の、会社の代表者が申し立てます。

ただ、中には、代表取締役が破産の申し立てを了承しない場合や、そもそも代表取締役が事故等により欠けている場合もあります。

そのような場合に、破産申立ができないということになってしまうと、多数の人に不利益が生じてしまうこともあります。

そのような不都合を避けるために、準自己破産という手続きが設けられています。

 

準自己破産の手続きは、通常の自己破産の手続きとほとんど同じで、効力も同じです。

もちろん手続き上、必要な書類が異なるなどの違いはありますが、その違いは大きくありません。

もし、破産手続きを考えている法人の役員等の地位にあって、代表者不在等により破産の手続きができないことでお困りの方がいましたら、弁護士に相談いただくとよいと思います。

弁護士が、準自己破産手続を利用できるかどうか検討し、利用できる場合には代理人として手続きを進めてくれるはずです。

東京都知事選挙

今日から東京都知事選挙の告示が始まりました。

 

投票する権利は18歳以上、立候補する権利は30歳以上の人で、その他の要件を満たす人に認められます。

 

なお、一般にどの程度知られているかはわかりませんが、選挙権は、憲法15条により保障された国民の権利です。

憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」としています。

同3項は、「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」としています。

憲法上の権利ですので、選挙権は、とても重要な権利であるといえます。

 

以前は、成年者とは20歳以上の者をさしていましたが、今は、18歳以上の者をさします。

法律の改正により、成年年齢が引き下げられ、選挙権を持つ人の数は、増加しており、より広く国民の意思が選挙結果に反映されるようになっています。

 

ただ、投票率は、あまり高くなく、令和2年の選挙では、55%程度であったようです。

重要な権利であるにもかかわらず、半分程度の人しか権利行使しておらず、一部の人の意思だけが選挙結果に反映されているともいえます。

より多くの方が、選挙権を行使し、その意思が選挙結果に反映されるようになるとよいかなと思います。

 

なお、選挙の投票日は7月7日です。