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CPA会議
医療観察法による入院措置が取られた場合、2から3か月に1度程度、CPA会議が開催されます。
CPA会議は、ケア会議とも呼ばれており、病院側と地域の担当者や家族とが会議をし、情報共有を行ったり意見交換を行ったりします。
弁護士の業務の1つである後見業務を行う際、このCPA会議に参加することがあります。
入院措置の期間は、ガイドラインによれば急性期3か月、回復期9か月、社会復帰期6か月とされているようであり、総期間18か月を想定しています。
ただ、私が参加したCPA会議での医師の話によれば、18か月で終了することが多いわけではなく、それ以上の期間になることが多いようです。
CPA会議では、看護師、医師、心理士、作業療法士等の専門家や、社会復帰調整官等の地域の担当者が参加し、現状の治療状況や今後の見通し等について共有されます。
最終的には退院し、地域で生活をしていくことになるため、退院に向けた環境の整備等の情報も共有されることがあります。
入院先の病院が必ずしも各出席者の近くにあるとは限らないため、移動時間等も含め拘束時間はかなりの時間になることがあります。
それでも、関係者が一堂に会することで情報共有が図られ、意見交換もできるため、有益だと感じます。
労働審判手続き
使用者と労働者との間の労働関係におけるトラブルを解決する手段の一つに、労働審判という手続きがあります。
東京地裁の民事第19部では、労働審判事件を取り扱っています。
労働審判手続きは、原則として3回以内の期日で終了するため、比較的短期間で結論が出るため、紛争の早期解決に適しています。
第1回期日で終了することも多く、最近対応した労働審判事件の中にも、第1回期日で終了した件があります。
労働審判手続きは、通常、労働者側が裁判所に申立書を提出して始まります。
申し立てられたのちに、裁判所から会社側に申立書が送られます。
申立書が送られてからおおむね1か月後に第1回期日が設定されます。
申し立てる労働者側は、比較的準備をする時間を長くとれるのに対し、会社側は比較的短期間で準備をしなければならない、ということです。
特に、会社側は、問題の存在自体を明確に認識していなかったり、時間が経過してしまって当時のことを知っている者が退職してしまったり忘れてしまったりしていることもあり、情報を整理するだけでも相当に困難なこともあります。
第1回期日では、申立書と、会社側が提出した答弁書や証拠等をもとに議論がされます。
事実関係の確認や主張の明確化などが行い、双方の主張の一致する点、一致しない点などを明確にします。
かなり細かな事実関係が確認されることもあるため、事実関係については、詳しくかつ正確に把握しておく必要があります。
これがうまくできないと、事実関係が正確に労働審判官や労働審判員に伝わらず、不利な認定をされてしまうことがあります。
お互いの書面や主張をもとに、お互いの合意できる点をすり合わせ、合意できるようであれば合意が成立し、合意内容が労働審判手続期日調書に残されるなどして終了します。
合意できない場合には、審判が出され、同様、その内容が労働審判手続き期日調書に残されるなどして終了します。
指定入院医療機関
精神疾患を抱えた人が、その精神疾患を原因として事件を起こしてしまった場合、医療観察制度という制度が利用されることがあります。
最終的に必要と判断されれば、入院または通院の決定が出されます。
この制度に基づく治療を行う機関として、指定入院医療機関があります。
東京都内の指定入院医療機関としては、国立精神・神経医療研究センター病院や、都立松沢病院があります。
指定入院医療機関に入院中は、状態に合わせた治療が行われます。
治療過程は、急性期の治療、回復期の治療、社会復帰期の治療などに分かれます。
どのように治療していくかについては、病院の担当チームや家族、社会復帰調整官等を交え、CPA会議と呼ばれる会議等で決められます。
状態が回復するまでの期間は個人差があるため、一概には言えませんが、1年以上かかることも多くあります。
入院治療中は、6か月ごとに裁判所が退院か入院継続かを判断します。
退院できる状態になっていると、裁判所の許可により退院となりますが、その後も、原則3年間の通院による治療継続が予定されています。
退院後の社会生活については、社会復帰調整官とも相談して決められます。
通院治療の状態を踏まえて、裁判所が最終的に処遇終了決定をすると、治療が終了します。
医療観察法の入院処遇
こんにちは。弁護士の石井です。
心神喪失の状態等で重大な他害行為を行った者に医療を提供する制度を定める法律として、いわゆる心神喪失者等医療観察法という法律があります。
この法律は、心神喪失や心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った人について、検察官が不起訴処分をしたり、裁判所が無罪としたりした場合に、その人について適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としたものです。
対象となる重大な他害行為は、殺人、放火、強盗等です。
医療や観察を受けさせるべきかどうかは、検察官の申し立てにより、裁判所が判断して決定します。
検察官の申し立てがあると、通常、裁判官が鑑定入院命令をします。
鑑定入院命令がされると、対象者は、指定医療機関に入院し、鑑定を受けます。
入院期間は2か月以内とされますが、1か月延長されることがあります。
鑑定の結果等を受けて、裁判所が審判をしますが、審判に際しては、裁判官と精神科医(精神保健審判員)からなる合議体により判断されます。
審判の結果医療観察法による医療の必要性が認められる場合には、入院決定または通院決定がなされます。
入院決定を受けると、指定医療機関に入院し、専門的な医療を受けることになり、裁判所の退院許可が出るまで入院が継続されます。
通院決定を受けると、原則として3年間通院して医療を受けることになります。
通院期間は2年を超えない範囲で延長されることもありますし、状態によっては入院に移行する場合もあります。
代表取締役不在の場合の会社の自己破産
会社の代表者が不在のため、会社の破産手続きができず困ってしまっている方が時々います。
そのような場合、準自己破産という手続きが利用できる場合があります。
準自己破産は、法人の役員等の申し立てにより行われる当該法人の破産手続きのことです。
本来、会社の自己破産は、会社の代表取締役等の、会社の代表者が申し立てます。
ただ、中には、代表取締役が破産の申し立てを了承しない場合や、そもそも代表取締役が事故等により欠けている場合もあります。
そのような場合に、破産申立ができないということになってしまうと、多数の人に不利益が生じてしまうこともあります。
そのような不都合を避けるために、準自己破産という手続きが設けられています。
準自己破産の手続きは、通常の自己破産の手続きとほとんど同じで、効力も同じです。
もちろん手続き上、必要な書類が異なるなどの違いはありますが、その違いは大きくありません。
もし、破産手続きを考えている法人の役員等の地位にあって、代表者不在等により破産の手続きができないことでお困りの方がいましたら、弁護士に相談いただくとよいと思います。
弁護士が、準自己破産手続を利用できるかどうか検討し、利用できる場合には代理人として手続きを進めてくれるはずです。
東京都知事選挙
今日から東京都知事選挙の告示が始まりました。
投票する権利は18歳以上、立候補する権利は30歳以上の人で、その他の要件を満たす人に認められます。
なお、一般にどの程度知られているかはわかりませんが、選挙権は、憲法15条により保障された国民の権利です。
憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」としています。
同3項は、「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」としています。
憲法上の権利ですので、選挙権は、とても重要な権利であるといえます。
以前は、成年者とは20歳以上の者をさしていましたが、今は、18歳以上の者をさします。
法律の改正により、成年年齢が引き下げられ、選挙権を持つ人の数は、増加しており、より広く国民の意思が選挙結果に反映されるようになっています。
ただ、投票率は、あまり高くなく、令和2年の選挙では、55%程度であったようです。
重要な権利であるにもかかわらず、半分程度の人しか権利行使しておらず、一部の人の意思だけが選挙結果に反映されているともいえます。
より多くの方が、選挙権を行使し、その意思が選挙結果に反映されるようになるとよいかなと思います。
なお、選挙の投票日は7月7日です。
ジョブ型雇用
こんにちは。弁護士の石井です。
先日、最高裁でジョブ型雇用についての配置転換に関する判決が出されました。
これまでの日本社会では、いわゆるメンバーシップ型と呼ばれる働き方が主流でした。
メンバーシップ型の場合、会社側には幅広い配置転換の権利が認められてきた(裏を返せばできる限り雇用確保を図るため配置転換をする義務が課されてきた)といえます。
そのため、配置転換については、会社側に幅広く裁量が認められ、ほとんどの場合配置転換が適法とされてきました。
近年では、ジョブ型雇用と呼ばれる雇用形態が増えてきたようですが、必ずしも厳格には運用されてきておらず、会社の配置転換に関する考え方は、従来とさほど変わっていないようです。
そのため、ジョブ型雇用でも配置転換が比較的緩やかに行われているように思います。
これに対し、今回の最高裁判例を前提とすれば、ジョブ型雇用の場合、会社側には配置転換の権利が必ずしもあるわけではないので、会社側が配置転換をする場合には、それが適法であるかどうかをこれまでよりも慎重に判断すべきということになりそうです。
さらにいえば、雇用契約を締結する際に、労働者側、会社側共に、配置転換の権利の範囲を明確にしておく必要があると思います。
最高裁判所の判断は、原則論に立ち返った当然の判決と言えると思いますが、これまでの実務感覚とは沿わないところがあると思うので、労働者側、会社側共に、意識を変える必要があるように思います。
フランチャイズ
セブンイレブンの店舗オーナーが時短営業を始めたあとに、本部からフランチャイズ契約を解除されたことなどをめぐる裁判が、最高裁で上告棄却となったようです。
この裁判のニュースを見ている方の中には、時短営業を認めないことが正当化されたと勘違いしている方もいるかもしれませんが、セブンイレブン側は、時短営業ではなく、お客様からの苦情の多さ等を問題として契約を解除しているため、時短営業を認めないことの是非について結論を出したものではないようです。
ところで、コンビニに限らず、フランチャイズ契約は、色々なところで利用されています。
フランチャイズというと、本部に搾取されるというイメージを持っている人も一定数いるようですが、本来は、独力では得難い情報、ノウハウを利用させる、利用できる契約であり、有益なものといえます。
もちろん、有益かどうかは、人により異なるはずですので、フランチャイズ契約を締結する際には、その契約が自分にとって本当に有益か、慎重に検討するべきです。
その点を間違えてしまうと、こんなはずじゃなかった、となり、大きな損失を抱えてフランチャイズ契約を解約しなければならない、ということになりかねません。
フランチャイズ契約を締結する前に弁護士に相談し、自分の求めるものが実現できているか、どのような点にどのような問題がありうるのかを確認しておけば、フランチャイズ契約を解約せざるを得ないということは少なくなるはずです。
相続回復請求権と取得時効
あまりなじみのない論点ですが、相続回復請求権と取得時効の関係で最高裁判所で判決が出されました。
この件は、それほど問題になるケースは多くないと思われますが、最高裁判所の判例ですので、相続を担当する弁護士としては知っておいてよいものかなと思います。
この件は、ざっくりいえば、不動産を所有していた被相続人が、相続人である養子と、相続人ではない甥に平等に遺産を分与する内容の遺言を残していたところ、相続人である養子が遺言の存在に気付かず、その不動産を自分が単独で相続したものと考えて、所有の意思をもって10年以上占有したというものです。
主な論点は、相続回復請求権の消滅時効が完成する前に、遺産であった不動産の共有持分権を時効取得できるか、です。
最高裁判所は、昭和53年12月20日の最高裁大法廷判決を参照しつつ、民法884条が消滅時効を定めた趣旨について、「相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させることにある」としました。
そのうえで、取得時効の要件を満たしたにもかかわらず相続回復請求権の消滅時効が完成していないことを理由に時効取得ができないとするのはこの趣旨に整合しないとし、「上記表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるものと解するのが相当」としています。
法的安定性を重視するのであれば、最高裁の結論は肯定できるように思いますが、被相続人の意思には明らかに反してしまっているという問題があるように思います。
遺言書を作成する理由は人それぞれですが、中には遺産の配分について自分の希望を入れたいという方や、家族、親族間での争いごとをなくしたいという方もいます。
今回の件は、そのいずれも実現できておらず、被相続人としては残念な気持ちでいるかもしれません。
遺言を作成する際に、遺言の内容だけでなく、その保管方法、自分が亡くなった後の対応方法なども考慮しておくべきだと思います。
公正証書遺言や自筆証書遺言保管制度もありますし、弁護士などの信頼できる第三者に預けておく方法もあると思います。
遺言書作成を考えている方は、いろいろ調べてみたり、相談してみたりするとよいと思います。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92826
刑事事件
今年に入ってから、刑事事件の相談が増えているように感じます。
刑事事件の対応は、早期対応が肝心ですが、実際に相談に来られる時点では、ある程度捜査が進んでいる状況にあることも多いように思います。
警察に事件が発覚する前であれば、自首するかどうかを検討することができます。
自首するべき場合には、自首同行を行い、円滑に自首が行えるようサポートします。
自首に関する相談としては、自首するべきか迷っているという相談もありますが、自首したいが、どのように扱われるか心配だという相談もあります。
警察に事件が発覚しているが、取り調べはまだ行われていない場合には、黙秘するかどうかを検討することができます。
どうしても、記憶があいまいであったり、覚えていなかったりする場合、間違ったことを言わないようにするためなどの理由から、多くの場合、黙秘することを進める弁護士が多いと思いますし、それが適切な場合が多いと思います。
ただ、黙秘し続けることは、想定以上に難しく、つい喋ってしまうという話はよく聞きます。
黙秘し続けられそうにない場合には、黙秘しないという選択もあり得ます。
捜査がある程度進んでおり、取り調べも行われて調書も作成されている、という段階での相談もあります。
その場合には、再犯防止の観点から、どのようなことができるか、という検討をすることが多いです。
この点について意識されている方は、思った以上に少ないという印象です。
どういったことができそうか、どなたに協力を得られそうか等の観点から対応を検討し、再犯防止のための努力をしていきます。
刑事事件において、弁護士ができる活動は、さまざまあり、上記以外の対応をとることもあります。
どういう対応をとるべきかは、個別事情に応じて変わりますので、弁護士に相談して検討するのが良いと思います。