カテゴリー別アーカイブ: 刑事事件

指定入院医療機関

精神疾患を抱えた人が、その精神疾患を原因として事件を起こしてしまった場合、医療観察制度という制度が利用されることがあります。

 

最終的に必要と判断されれば、入院または通院の決定が出されます。

この制度に基づく治療を行う機関として、指定入院医療機関があります。

東京都内の指定入院医療機関としては、国立精神・神経医療研究センター病院や、都立松沢病院があります。

 

指定入院医療機関に入院中は、状態に合わせた治療が行われます。

治療過程は、急性期の治療、回復期の治療、社会復帰期の治療などに分かれます。

どのように治療していくかについては、病院の担当チームや家族、社会復帰調整官等を交え、CPA会議と呼ばれる会議等で決められます。

状態が回復するまでの期間は個人差があるため、一概には言えませんが、1年以上かかることも多くあります。

 

入院治療中は、6か月ごとに裁判所が退院か入院継続かを判断します。

退院できる状態になっていると、裁判所の許可により退院となりますが、その後も、原則3年間の通院による治療継続が予定されています。

退院後の社会生活については、社会復帰調整官とも相談して決められます。

 

通院治療の状態を踏まえて、裁判所が最終的に処遇終了決定をすると、治療が終了します。

医療観察法の入院処遇

こんにちは。弁護士の石井です。
心神喪失の状態等で重大な他害行為を行った者に医療を提供する制度を定める法律として、いわゆる心神喪失者等医療観察法という法律があります。

この法律は、心神喪失や心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った人について、検察官が不起訴処分をしたり、裁判所が無罪としたりした場合に、その人について適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としたものです。

対象となる重大な他害行為は、殺人、放火、強盗等です。

 

医療や観察を受けさせるべきかどうかは、検察官の申し立てにより、裁判所が判断して決定します。

検察官の申し立てがあると、通常、裁判官が鑑定入院命令をします。

鑑定入院命令がされると、対象者は、指定医療機関に入院し、鑑定を受けます。

入院期間は2か月以内とされますが、1か月延長されることがあります。

 

鑑定の結果等を受けて、裁判所が審判をしますが、審判に際しては、裁判官と精神科医(精神保健審判員)からなる合議体により判断されます。

審判の結果医療観察法による医療の必要性が認められる場合には、入院決定または通院決定がなされます。

入院決定を受けると、指定医療機関に入院し、専門的な医療を受けることになり、裁判所の退院許可が出るまで入院が継続されます。

通院決定を受けると、原則として3年間通院して医療を受けることになります。

通院期間は2年を超えない範囲で延長されることもありますし、状態によっては入院に移行する場合もあります。

 

刑事事件

今年に入ってから、刑事事件の相談が増えているように感じます。

刑事事件の対応は、早期対応が肝心ですが、実際に相談に来られる時点では、ある程度捜査が進んでいる状況にあることも多いように思います。

 

警察に事件が発覚する前であれば、自首するかどうかを検討することができます。

自首するべき場合には、自首同行を行い、円滑に自首が行えるようサポートします。

自首に関する相談としては、自首するべきか迷っているという相談もありますが、自首したいが、どのように扱われるか心配だという相談もあります。

 

警察に事件が発覚しているが、取り調べはまだ行われていない場合には、黙秘するかどうかを検討することができます。

どうしても、記憶があいまいであったり、覚えていなかったりする場合、間違ったことを言わないようにするためなどの理由から、多くの場合、黙秘することを進める弁護士が多いと思いますし、それが適切な場合が多いと思います。

ただ、黙秘し続けることは、想定以上に難しく、つい喋ってしまうという話はよく聞きます。

黙秘し続けられそうにない場合には、黙秘しないという選択もあり得ます。

 

捜査がある程度進んでおり、取り調べも行われて調書も作成されている、という段階での相談もあります。

その場合には、再犯防止の観点から、どのようなことができるか、という検討をすることが多いです。

この点について意識されている方は、思った以上に少ないという印象です。

どういったことができそうか、どなたに協力を得られそうか等の観点から対応を検討し、再犯防止のための努力をしていきます。

 

刑事事件において、弁護士ができる活動は、さまざまあり、上記以外の対応をとることもあります。

どういう対応をとるべきかは、個別事情に応じて変わりますので、弁護士に相談して検討するのが良いと思います。

 

大麻使用罪

大麻は、法律により所持等が禁止されている薬物の一つです。

これまで、大麻については、所持罪は規定されているものの使用罪がありませんでした。

その理由として、麻が比較的身近にあり、

その意味では、やや特殊な位置づけの薬物であるといえます。

 

今回、大麻を規制する大麻取締法改正案が可決され、大麻使用罪が新設されました。

施行はまだですので、現時点では、大麻使用罪で捕まることはありませんが、施行後は大麻使用罪で捕まることがあります。

改正の理由の一つには、若年層での大麻使用の広がりがあるようです。

弁護士活動の実体験としても、大麻の事件は多く、青少年の大麻がらみの事件も少なくない印象です。

この法改正により、大麻使用が少なくなり、青少年の保護につながればよいなと思いますが、他の薬物の使用状況や大麻の使用自体は既に規制されていることを踏まえると、大麻使用罪を新設するだけではなかなか難しいかもしれないなと思います。

法規制だけではなく、青少年が大麻含めた薬物に触れる環境をできる限り少なくする、薬物を使用してしまった人が、再度薬物を使用することがないように支援すること等も必要だという意見もききます。

それでも、今回の法改正が、青少年の保護に少しでもつながればよいと思います。

通訳

昨日は、東京で桜の開花が発表されました。

昨日はやや寒かったので桜が開花するというのは意外でした。

日本全国で東京が一番に開花したようです。

九州地方などより西の方が開花が早いイメージがありましたが、東京が一番早いこともあるのですね。

過去にも2020年など、桜の開花について東京が一番早かったことがあるようです。

 

弁護士が仕事をするうえで、通訳の方の協力を得ることがあります。

外国籍の方の相談に通訳の方が同席することもありますが、比較的通訳の方の協力を得ることが多いケースとして刑事事件があります。

逮捕された人が外国籍の場合、日本語が十分に理解できないことがあります。

その場合、通訳の方の協力を得る必要があります。

 

通訳の方は色々な方がいます。

もともと日本で生まれて外国語を勉強されている方もいれば、もともと外国で生まれて日本に来た方もいます。

時にはある程度日本語が理解できる方もいるので、その場合は主に日本語で説明をしながら、適宜通訳の方に補充的に外国語での説明をしていただくこともあります。

通訳の方が誤った翻訳をすると、弁護士の説明が正しく伝わらなかったり、弁護士が本人の言っていることを誤って理解してしまったりする可能性があります。

そのため、通訳の方の果たす役割は相当に重要といえます。

 

証拠の同意不同意

弁護士の仕事の一つとして刑事事件があります。

刑事事件の公判では、証拠に基づき裁判が行われています。

一般的にはあまり意識されていないかもしれませんが、公判に提出できる証拠は限

定されており、何でもよいわけではありません。

 

刑事訴訟法320条1項では、「第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場

合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外に

おける他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。」とされてい

ます。

原則論として、公判における供述が証拠となるのであって、書証は証拠とすること

ができないということです。

例外規定の一つとして、刑事訴訟法326条1項は、「検察官及び被告人が証拠と

することに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの

情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわら

ず、これを証拠とすることができる。」とされています。

この規定があるために検察官と弁護人双方が同意した書証については、公判に証拠

として提出できることとなります。

書証をすべて排斥し、公判廷における供述のみを証拠として公判を行おうとすると、

相当な時間がかかってしまいますし、内容によっては非常にわかりにくくなってし

まいます。

その弊害をさけるため、実際には、公判に提出される証拠の多くは書証となってい

ます。

 

実際の公判手続きにおいては、通常、第1回公判期日前に検察側、弁護側双方が提

出予定証拠を開示し、同意不同意の確認をします。

公判を傍聴したことがある人は聞いたことがあるかもしれませんが、裁判官が証拠

についての意見を双方に聞いていますので、厳密には公判廷において最終的な同意

不同意の確認が行われますが、事前に回答内容は決まっており双方それを前提に準

備をしています。

同意された書証は、同意証拠として公判に提出します。

不同意とされた証拠は、撤回して人証に代えることもありますし、刑事訴訟法の他

の規定を基にして書証として提出することもあります。

 

証拠に対する同意不同意の状況次第で、公判手続きの進め方が変わります。

被疑者国選勾留前援助

刑事事件で逮捕拘留された被疑者に早期のアドバイス等を行うための

制度として、当番弁護士制度というものがあります。

当番弁護士は、被疑者に面会に行き、話を聞いたうえでアドバイスを

行います。

これ自体は、無料の制度となっており、被疑者が費用を負担する必要

はありません。

 

逮捕拘留された被疑者がその後勾留されると、被疑者国選弁護の対象

となり、国選弁護人による弁護が受けられるようになります。

ただ、あくまでも国選弁護人による弁護が受けられるのは勾留された

後であり、その前の逮捕拘留段階では国選弁護人による弁護は受けら

れません。

 

当番弁護と被疑者国選弁護の隙間を埋めるための制度として、被疑者

国選勾留前援助という制度があります。

これは、日本弁護士連合会による委託援助の一つです。

本来弁護士を依頼する場合には弁護士費用を支払わなければなりませ

んが、資力に乏しいため弁護士を依頼できない方のために、弁護士費

用等の援助をする制度です。

援助であるため、費用負担が生じるのが原則であると思われ、実際に

援助については負担を求められることがあるとされていますが、この

制度を利用されて私が対応した方で、費用負担を求められた方はいな

いはずです。

 

実質的には無償で弁護士を依頼できる制度といってもよいかもしれま

せんので、利用できる方はできる限り利用されるとよいと思います。

改正銃刀法施行

先日仕事で東京都内の警察署に行った際、改正銃刀法が令和4年

3月15日から施行されたことが記載されたポスターを見ました。

 

改正銃刀法は、令和3年6月16日に公布され、令和4年3月1

5日から施行されています。

この改正により、クロスボウ(ボウガン)の所持が原則禁止され、

許可制となったようです。

クロスボウを使用した犯罪の発生を受けて、法律が改正されたよう

です。

多くの方にとっては、クロスボウの所持が原則禁止されていなかっ

たこと自体が驚きではないかと思います。

改正銃刀法が令和4年3月15日から施行されたことも知らなかっ

た方がほとんどではないかと思います。

 

令和4年3月15日午前0時までに所持していたクロスボウについ

ては、一定の猶予期間が設けられており、所持許可を申請する、廃

棄する、適法に所持できる方に譲渡するため、6か月の間は所持で

きるようです。

警察署で無償で処分してもらえるようですので、令和4年3月15

日午前0時時点で所持していた方は、警察に処分依頼をするとよい

かもしれません。

 

所持許可の申請は、令和4年3月15日から受付されているようで

す。

希望される方は、最寄りの警察署に相談に行かれるとよいと思いま

す。

 

改正銃刀法の施行により、犯罪が少しでも減って、皆が安心して暮

らせるとよいと思います。

 

 

行為依存とその治療

先日、弁護士向けの、行為依存とその治療に関する研修を受講しました。

この研修は、刑事事件に関するものです。

 

刑事事件というと、無罪を争うことをイメージする人もいるかもしれま

せんが、多くの刑事事件は、やったことは認めており、それに対する刑

罰の重さを決めることが主として問題となっています。

 

行為依存とその治療は、有罪か無罪かを判断するような事件でも必要と

なるものといえます。

ただ、どちらかといえば、やったことは認めたうえで、刑罰の重さを決

める場面や、それを超えて、次に同じことをしないようにするためにど

うしたらよいかという場面で必要となるものだと思います。

 

行為依存の一つの例として窃盗症があります。

窃盗症は、個人用に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のため

でもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返され

てしまうものです。

この場合、本人を処罰しても結局物を盗もうとする衝動に抵抗できなく

なり、また窃盗を繰り返してしまうということがおこります。

そのような場合には、本人をいくら処罰しても効果がなく、むしろ、治

療を行うことで窃盗を繰り返してしまうことを防止できることがありま

す。

 

行為依存の治療方法にはいくつかの考え方があります。

うまく治療できて、窃盗を繰り返してしまうことが防止できれば、本人

のためにも社会のためにも有益だと思います。

 

再度の執行猶予

以前に一度でも執行猶予を受けていると、再度執行猶予を受けることは

できないと誤解されているかががいるようです。

実際には、そのようなことはなく、以前に一度執行猶予を受けている方

でも執行猶予を受けることはできます。

 

再度執行猶予を受けることを再度の執行猶予ということがあります。

ここでも誤解されている方もいますが、以前に執行猶予を受けたことが

ある方が、再度執行猶予を受けることの全てを再度の執行猶予というわ

けではありません。

再度の執行猶予は、執行猶予中に罪を犯した者にもう一度執行猶予を与

える場合に使います。

 

再度の執行猶予が付される条件はかなり厳しいですが、認められないわ

けではありません。

これに対し、執行猶予期間を経過した後に再度罪を犯した人が執行猶予

を受けるのは、同じく厳しくはありますが、再度の執行猶予ほどの厳し

さではありません。

疾呼猶予の獲得を希望している方は、弁護士に相談されるとよいと思い

ます。

 

なお、前刑と同種の犯罪をしてしまい、再度の執行猶予を希望する場合

には、再犯防止措置をしっかりと考えるべきだと思います。

前刑の再犯防止措置と同じでは、再犯防止が図れない可能性が高いから

です。

前回の問題、失敗点を確認し、分析したうえで、どのようにしたら再犯

防止が図れるか、よく検討しないと、執行猶予が得られなかったり、得

られたとしても再度犯罪をしてしまい、意味がなくなってしまう可能性

があります。

弁護士とよく相談して検討するとよいと思います。