カテゴリー別アーカイブ: 労働法

労働審判手続き

使用者と労働者との間の労働関係におけるトラブルを解決する手段の一つに、労働審判という手続きがあります。

東京地裁の民事第19部では、労働審判事件を取り扱っています。

労働審判手続きは、原則として3回以内の期日で終了するため、比較的短期間で結論が出るため、紛争の早期解決に適しています。

第1回期日で終了することも多く、最近対応した労働審判事件の中にも、第1回期日で終了した件があります。

 

労働審判手続きは、通常、労働者側が裁判所に申立書を提出して始まります。

申し立てられたのちに、裁判所から会社側に申立書が送られます。

申立書が送られてからおおむね1か月後に第1回期日が設定されます。

申し立てる労働者側は、比較的準備をする時間を長くとれるのに対し、会社側は比較的短期間で準備をしなければならない、ということです。

特に、会社側は、問題の存在自体を明確に認識していなかったり、時間が経過してしまって当時のことを知っている者が退職してしまったり忘れてしまったりしていることもあり、情報を整理するだけでも相当に困難なこともあります。

 

第1回期日では、申立書と、会社側が提出した答弁書や証拠等をもとに議論がされます。

事実関係の確認や主張の明確化などが行い、双方の主張の一致する点、一致しない点などを明確にします。

かなり細かな事実関係が確認されることもあるため、事実関係については、詳しくかつ正確に把握しておく必要があります。

これがうまくできないと、事実関係が正確に労働審判官や労働審判員に伝わらず、不利な認定をされてしまうことがあります。

 

お互いの書面や主張をもとに、お互いの合意できる点をすり合わせ、合意できるようであれば合意が成立し、合意内容が労働審判手続期日調書に残されるなどして終了します。

合意できない場合には、審判が出され、同様、その内容が労働審判手続き期日調書に残されるなどして終了します。

ジョブ型雇用

こんにちは。弁護士の石井です。
先日、最高裁でジョブ型雇用についての配置転換に関する判決が出されました。

 

これまでの日本社会では、いわゆるメンバーシップ型と呼ばれる働き方が主流でした。

メンバーシップ型の場合、会社側には幅広い配置転換の権利が認められてきた(裏を返せばできる限り雇用確保を図るため配置転換をする義務が課されてきた)といえます。

そのため、配置転換については、会社側に幅広く裁量が認められ、ほとんどの場合配置転換が適法とされてきました。

 

近年では、ジョブ型雇用と呼ばれる雇用形態が増えてきたようですが、必ずしも厳格には運用されてきておらず、会社の配置転換に関する考え方は、従来とさほど変わっていないようです。

そのため、ジョブ型雇用でも配置転換が比較的緩やかに行われているように思います。

 

これに対し、今回の最高裁判例を前提とすれば、ジョブ型雇用の場合、会社側には配置転換の権利が必ずしもあるわけではないので、会社側が配置転換をする場合には、それが適法であるかどうかをこれまでよりも慎重に判断すべきということになりそうです。

さらにいえば、雇用契約を締結する際に、労働者側、会社側共に、配置転換の権利の範囲を明確にしておく必要があると思います。

 

最高裁判所の判断は、原則論に立ち返った当然の判決と言えると思いますが、これまでの実務感覚とは沿わないところがあると思うので、労働者側、会社側共に、意識を変える必要があるように思います。

 

 

解雇理由証明書

従業員を解雇した場合、従業員の求めがあれば、解雇理由証明書を交付しなければなりません。

これは、労基法22条1項に定められた会社の義務です。

 

労基法22条1項は、労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。としています。

これに反して、解雇理由証明書を交付しなかった場合、労基法120条1号により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

解雇理由証明書を交付したとしても、「遅滞なく」交付しなかった場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

この「遅滞なく」とは、事情の許す限りできるだけ早く、というニュアンスで使用されます。

そのため、合理的な理由があれば、遅れも許されるものと考えられます。

ただ、合理的な理由と認められるかの判断は難しく、その判断を誤ると、罰金刑を科されるリスクがあります。

業種によっては、罰金刑を科されることで、各種許可等を取り消される可能性があります。

万が一許可を取り消されると、経営上、相当な影響が出る可能性がありますので、従業員から解雇理由証明書の発行を求められた場合には、できる限り早急に対応するべきでしょう。

着替え時間と給与

未払い賃金に関する相談は、弁護士への相談として比較的多いものです。

 

最近、着替え時間が給与の支払い対象である労働時間に含まれるかが話題になっていました。

着替え時間が労働時間に含まれるか、は比較的以前から問題となっている点であり、いわゆる教科書的な労働法の本にも言及のある論点です。

 

この問題に言及した判例としては、平成12年3月9日の、三菱重工長崎造船所事件が有名です。

この判例では、まさに、更衣の時間が労働時間に含まれるかが問題となっていました。

 

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

この労働時間に該当するかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないとされています。

そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとされています。

この判例では、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていること、その装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたことが指摘され、更衣の時間も労働時間に該当するとされました。

 

最近は私服可の会社も多くありますが、制服等が定められ、着替えることが必須となっている会社もまだまだ少なくありません。

そのような会社では、制服等の指定を継続するのか、継続するとするならば、着替えの時間を労働時間に含めるべきか、等を検討する必要があります。

労働基準法の改正により、未払い給与の請求権の時効は、5年間に延長されています。

当面経過措置により、時効期間は3年とされていますが、仮に5年分の着替え時間について未払い賃金請求がされると、その額はかなりの額になることが予想されます。

それが、全従業員について生じるとなると、会社の経営に与える影響も少なくありませんので、この件は、かなり慎重に考える必要があると思います。

 

学校の先生の残業代請求

弁護士が相談を受けるものの一つとして、残業代請求があります。

先日、公立の小学校の教諭が残業代等の支払いを求めた裁判の最高裁での判断が出されました。

最高裁は、教諭側の上告を退けて教諭側の敗訴が確定しました。

公立の小学校の教諭の残業については、今後も残業代は支払われないこととなりそうです。

 

公立の小学校の教諭の残業代については、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法という法律(給特法と呼ばれたりします。)に規定がされています。

同法の第3条第2項には、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」と規定されています。

法律で支払わないと規定されている以上、なかなか教諭側の主張は認められづらいのだろうという印象にはなりますね。

 

一般の会社では、労働基準法により、残業代の支払いが会社に義務付けられています。

公務員については、その職務の特殊性から、一般の会社とは異なった規定がされていることがあります。

給特法の第1条には、「この法律は、国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定めるものとする。」と規定されておりますので、公務員であること(特に教育職員であること)の特殊性から、一般の会社とは異なって残業代が支払われないのだろうと思います。

立法の経緯などもみますと、教師一人一人の自発性、創造性という言葉が多用され、その上で勤務実態の把握の困難さなども指摘されています。

弁護士などの専門家に適用され得る裁量労働制と同じようなイメージでしょうか。

 

この法律自体は、昭和47年1月1日から施行されているようですので、だいぶ古い法律といってよいと思います。

この規定を今後も適用してよいかは、引き続き議論がされるだろうと思います。

新幹線オフィス車両

今日は、遠方で労働審判があったため、久しぶりに仕事で新幹線を利用しました。

コロナが発生して以降、裁判がWEB会議が多くなり、あまり裁判所に行く機会もなくなっていましたので、本当にいつぶりだろうかという感じです。

 

今日まで知らなかったのですが、新幹線では、オフィス車両というものが導入されているようです。

オフィス車両では、座席で電話もしてよいとされていますし、WEB会議も行ってよいようです。

仕事をしやすくするためのツールの貸し出しもあるようですし、移動の多い方にとっては、移動時間を有効活用でき、かなりいいものなのではないかと思います。

たまたま、今日は、東京方面に向かう際、オフィス車両に乗ることになり、初めてオフィス車両を利用しました。

オフィス車両の座席はかなり空いていて、乗っている人もまばらな状態でした。

電話している人もおり、比較的気軽に電話やWEB会議などが行えるなと感じました。

実際、私も社内で仕事をしてみましたが、他の人にあまり気を遣わなくてよく、かなりよいなと思いました。

 

このオフィス車両は、8号車限定で、追加料金は不要のようです。

予約時に8号車を選択することで使えるようですので、機会があれば、また利用したいなと思いました。

 

 

うつ病による労災申請

精神障害での労災申請の相談を受けることもあります。

精神障害はその発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に労災

認定されます。

 

精神障害での労災認定の要件は、①認定基準の対象となる精神障害を発病している

こと、②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務によ

る強い心理的負荷が認められること、③業務以外の心理的負荷や個体側要因により

発病したとは認められないこととされています。

そうしますと、仮に仕事によるストレスが強かったとしても、仕事以外でのストレ

スも強い場合やもともと精神症状を抱えていた場合などは労災認定されない可能性

があることになります。

 

心理的負荷の程度は、心理的負荷評価表に従って判断され、そこで心理的負荷の程

度が「強」に該当するとされると、業務による強い心理的負荷が認められることに

なります。

うつ病により労災が認定されるものの一つには、長期間にわたる長時間労働があり

ますが、発病直前3週間でおおむね120時間以上の残業をした場合や、発病直前

3か月間連続して1か月あたりおおむね100時間以上の残業をした場合などは、

心理的負荷の程度が「強」と判断されます。

もちろん、他の要件もありますので、上記の長時間労働があれば必ず労災認定さ

れるわけでもありませんし、上記の時間に満たない場合が全て労災認定されない

わけでもありません。

 

精神障害での労災認定を検討されている方は、弁護士に要件を充たすかどうか等

を相談してみるとよいと思います。

 

 

休業と給料の支払い

東京を含め全国的にコロナウイルスによる影響は広範囲に広がっています。

 

売上減少により事業の縮小を余儀なくされたり休業を余儀なくされたりしている

所もあるようです。

売上減少だけでなく,感染者が社内で発生したために事業所が閉鎖され,休業を

余儀なくされることもあります。

これに伴って,休業の際に給料の支払いについてどうしたらよいかについて悩ん

でいる経営者の方もいると思います。

給料が支払われるのかについて悩んでいる従業員の方もいると思います。

 

休業と給料の支払いについては,まず民法で規定されています。

民法536条1項では,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって

債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むこ

とができる。」とされています。

これに対し,民法536条2項では,「債権者の責めに帰すべき事由によって債務

を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことが

できない。」とされています。

 

これらの規定を前提にすると,休業の原因が会社側にない場合には,給料は支払わ

れないことになりますし,休業の原因が会社側にある場合には給料は支払われると

いうことになります。

コロナウイルスの影響を踏まえて,会社が自主的に休業した場合には,会社の「責

めに帰すべき事由」による休業として民法536条2項が適用され,給料が支払わ

れるとなるものと思われます。

ただ,この判断は,その時の社会の状況,会社の状況によって変わる可能性があり,

裁判所の判断によっては,結論が変わる可能性があります。

これに対し,感染者が社内で発生したために事業所が閉鎖された場合には,会社の

自主的な休業ではなく,会社の「責めに帰することができない事由」による休業と

して給料は支払われないとなるものと思われます。

ただ,この場合でも,事業所閉鎖に至る経緯によっては,会社側に「帰責性」があ

ると裁判所が判断する可能性もあり,その場合には結論が変わる可能性があります。

 

給料を支払う必要がない,給料が支払われないとしても,休業手当についてはどう

でしょう。

 

労働基準法26条では,「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,

使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払

わなければならない。」とされています。

この手当が休業手当です。

ここにいう使用者の「責に帰すべき事由」については,民法の「責めに帰すべき事

由」と同じであるとすれば,民法上給料を支払う必要がない,給料が支払われない

となってしまいます。

しかし,最高裁判所は,「使用者の責に帰すべき事由」は,取引における一般原則

である過失責任主義とは異なる観点も踏まえた概念であり,民法536条2項の

「債権者の責に帰すべき事由」よりも広く,使用者側に起因する経営,管理上の障

害を含むものと理解するのが相当としています。

これは改正前民法の時の判例ですが,改正後の民法下でも適用されると思われます。

そうすると,民法536条2項に該当し,民法上は給料を支払わなくてもよい,給

料が支払われない場合であっても,休業手当が支払われる可能性はあります。

 

いずれにしても,休業と給料の支払いについては,個別のケースにより結論が異な

る可能性があり,非常に微妙な判断となる可能性が高いものといえます。

会社側,労働者側,いずれの立場に立つとしても,弁護士に相談しながら慎重に対

応するべきだと思います。

 

ただ,労働基準法には,罰則規定があり,違反すると刑事責任を問われる可能性が

あります。

休業手当を支払わなければならない場合か判断に迷うようなケースであれば,会社

側としては,休業手当は支払った方がよい,となるように思います。

なお,給料を支払わなければならない場合の額について,60%の額であると認識

している方がいます。

多くの方が誤解している点ですが,これは,上記のとおり誤っています。

この点は誤解のないように注意しておきましょう。

 

弁護士法人心のホームページ写真の更新

弁護士法人心の各事務所ごとのホームページの集合写真が更新されました!

 

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弁護士へのご相談をお考えの方や,法律問題でお悩みの方は,ぜひ一度,弁護士法人

心のホームページをご覧いただければと思います。

 

弁護士法人心のホームページでは,ご相談者の方,ご依頼者の方に安心してご相談,

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ご興味,ご関心をいただけました方は,ぜひ,弁護士法人心の各事務所ごとの

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以下に弁護士法人心 東京駅法律事務所のホームページのリンクを掲載しており

ますので,こちらをクリックしていただければと思います。

 

弁護士法人心 東京駅法律事務所のホームページのリンク

弁護士法人心 池袋駅法律事務所開設

弁護士法人心の10か所目の拠点として,弁護士法人心 池袋駅法律事務所が開設されました。

場所は,池袋駅西部口から徒歩3分のところです。

住所は,東京都豊島区南池袋2-26-4 南池袋平成ビル6Fです。

 

詳細は,弁護士法人心池袋駅法律事務所のホームページにも記載されていますので,ぜひ

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池袋駅は,多くの方がご利用される大きな駅ですので,ご利用いただきやすいかと思います。

JR埼京線,湘南新宿ライン,山手線,東武東上線,西武池袋線,東京メトロ丸の内線,東京

メトロ有楽町線,東京メトロ副都心線が通っており,東京都内はもちろん,埼玉県内からもお

越しいただきやすいかと思います。

 

弁護士法人心では,交通事故,債務整理,相続,遺言など,様々な業務を取り扱っております。

各弁護士は,それぞれ担当分野を有しており,担当分野に集中して取り組むことで,経験,ノウ

ハウの集積を図り,質の高いサービスを提供できるように努めております。

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