月別アーカイブ: 2016年 6月

会社経営者と休業損害

会社の経営者の方も事故にあうことはあります。

 

会社の経営者の方が事故にあった場合,休業損害が認められるか,という

問題が生じることがあります。

 

一般に,会社の経営者の方は,役員報酬を受け取っており,休業してもしな

くても収入が減少しないため,休業損害は認められないことが多いです。

加害者側保険会社からも否定され,それを理由として弁護士に相談に来られる

方も多くいます。

実際には,会社の経営者の多くは,自分が休業しなければならなくなった場合,

自分の収入をそのまま会社に対する貸付として計上し,会社に現金を戻して

自分では事実上報酬を受け取らないことがかなりあります。

そうすると,実質的には収入減少があるため,会社の経営者の方にも休業

損害が認められてもよいように思います。

 

しかし,会社に対する貸付は,いずれは返してもらえるものという扱いである

ため,裁判所はほとんど休業損害を認めません。

いろいろチャレンジしてはみますが,形式上,損害が生じていないため,これを

認めさせるのは極めて難しいと感じます。

弁護士と司法書士

弁護士と司法書士とは,取り扱う事件について,重複する部分が多くあります。

司法書士は,紛争の目的物の価額が140万円を超るものについては取り扱うことができないとされています。

この,140万円を超えるか否かを,どのようにして判断するのか,について,司法書士会と弁護士会とで見解が分かれていました。

 

この点について,最高裁判所が判断をしていますが,最高裁判所は,140万円を超えるか否かについて,

受任した債権の総額を基準として判断するのではなく,個別の債権の価額を基準として判断するとしました。

 

最高裁判所の判断により,判断基準が明確化されたので,今後は,この件で,問題が生じることは少なくなると思います。

買替諸費用と車両の買替え

交通事故により,車両が全損となった場合,買替諸費用が賠償対象であるか問題と

なることがあります。

 

多くの場合,請求がなければ,保険会社が積極的に買替諸費用を賠償することは

ないと思います。

請求したとしても,車両の買い替えがなされていなければ,買替諸費用は賠償しない

と言われることも多くあります。

 

しかし,多くの裁判例では,買替前であっても,買替諸費用の賠償を認めており,

弁護士がそれを踏まえて交渉すると,ほとんどの場合,いくらかは買替諸費用の

賠償を認めるように感じます。

 

諸費用の額自体は,それほど大きくはありませんが,車両本体価格の賠償額のみ

では,車両を購入するのが難しいことも多いため,意外と重要な費目であると

思います。

 

フレーム損傷

自動車事故において,損傷がいわゆるフレームにまで及んでいるかは

重要な点だと思います。

 

フレームにまで損傷が及んでいたとしても,修理自体不可能と判断

されるわけではありませんが,安全性への影響については不明であり,

修理して乗り続けることは進めないと修理業者の方から言われるケース

がかなりあります。

 

そのため,フレームにまで損傷が及んでいるケースでは,買替を選択

される方が多くいます。

 

ただし,買替に要する費用は,経済的全損でない限り,通常賠償され

ませんので,買い替えるかどうかの判断は難しいと思います。

 

 

優先道路直進走行車両と一時停止規制違反走行車両との事故

優先道路と劣後道路が交差するところでは,劣後道路に一時停止規制がされていることが

あります。

 

優先道路を直進走行する車両と,劣後道路から一時停止規制に違反して交差点に進入した

車両との衝突事故において,過失割合が問題となることがあります。

 

この事故における基本的過失割合は,優先車10対劣後車90とされています。

そのため,多くのケースで,この事故については,過失割合が10対90で話し合いが

されています。

 

しかし,同種事故において,優先車の過失割合を否定している裁判例があり,実際,

裁判所の和解案においても,優先車の過失割合を否定する和解案が出されることが

よくあります。

高等裁判所の裁判例でもあり,比較的使いやすい裁判例です。

 

なお,優先道路に該当するかどうかは,一般の方の感覚と異なることが多いので

優先道路該当性は,弁護士等の専門家に確認されたほうがよいと思います。

慰謝料の算定基準(赤い本)

弁護士がよく使用する赤い本の慰謝料算定基準が少し変更されています。

 

以前は,別表Ⅰの適用に際しては,長期かつ不規則な通院の場合実日数の3.5倍程度を慰謝料

算定のための通院期間の目安とすることがあるとしていたのが,通院が長期にわたる場合,症状,

治療内容,通院頻度をふまえ実日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とする

こともあるとされました。

 

また別表Ⅱの適用に際しては実通院日数の3倍程度を目安とするとされていたのが,通院が長期に

わたる場合,症状,治療内容,通院頻度をふまえ実日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間

の目安とすることもあるとされました。

 

この変更が実務にどのような影響を与えるか,注目です。

重過失減額

自賠責保険は,ある程度の過失までは考慮せずに保険金の支払いをしています。

 

しかし,被害を受けた方の過失割合が7割以上になるケースでは,2割以上の減額が

されます。

傷害分については,2割の減額となりますが,後遺障害分については,過失の程度に

より減額割合が異なります。

7割以上8割未満が2割の減額,8割以上9割未満が3割の減額,9割以上10割

未満が5割の減額とされています。

 

 

自賠責保険と減額

車両を所有する際には,通常自賠責保険に加入します。

 

交通事故で怪我をされた場合,加害者の加入する自賠責保険に保険金請求をすることができます。

弁護士等が代行して請求することも多くなっていると思います。

 

自賠責保険に保険金請求をすると,損害額の認定をし,認定に沿って保険金の支払いがされます。

これまでは,保険金の請求をした場合,治療単価について減額されることは少なかったように思います。

最近は,自賠責保険への請求を行った際に,治療費等の減額がされるケースが増えてきているように感じます。

 

自賠責保険への請求に際しては,少し注意が必要です。