月別アーカイブ: 2017年 8月

医師との対応

交通事故により怪我をした場合には,病院や接骨院・整骨院で治療を受ける方が多いです。

中には,鍼灸院で鍼灸治療を受けている方もいます。

 

交通事故により負った怪我の治療を鍼灸院で受ける場合,原則として医師の同意をと得て

おく必要があります。

接骨院・整骨院で治療を受ける場合には,必ずしも医師の同意を得ておく必要はありませんが,

現状の裁判所の考え方を前提とすれば,医師の同意を得ておく方が安心できます。

 

交通事故被害者の中には,医師と対立してしまう方もいます。

このようなことはできる限り避けるべきであり,医師とは良好な関係を築くようにするか,

なかなか築けないような場合には,通院先を変更するほうが良いと思います。

 

医師と対立してしまうと,最良な治療を受けられない可能性があります。

医師は,応招義務があるため,対立していても治療自体は受けられます。

医師がプロである以上,感情とは関係なく,最良の治療ができるとも思えます。

しかし,医師も人間であるため,感情が結果に全く影響しないとは言い切れません。

最良な治療が受けられなければ,本来完治したはずのものが,完治しないままになってしまう

可能性もあります。

完治したとしても,本来の治療期間よりも長期化してしまう可能性もあります。

鍼灸院での鍼灸治療に対する同意が得られない可能性もありますし,接骨院・整骨院での治療

に対する同意が得られない可能性もあります。

 

治療の終了後も,加害者側との交渉にあたり,医師の意見が必要となることもあります。

加害者側から医師に対し,医療照会が行われる場合もあります。

その際,医師と対立していると,医師の意見が全くもらえなかったり,もらえたとしても不十分

であったりする可能性があります。

医療照会において,被害者に有利な点が記載されなかったり,被害者にとって不利な表現で記載

されてしまったりする可能性もあります。

 

医師と対立して,被害者にメリットとなることはないといってよいと思います。

医師との関係は,できる限り良好に保っておく方が,最終的には良い結果となる可能性が高いと

思います。

 

医師との関係を良好に保つことだけでなく,医師との対応においては,自己の症状等をどのように

伝えるかに注意をする必要があります。

医師に伝えた事項は,通常カルテや診断書等に記載されます。

 

問題が生じた際に,カルテや診断書等に記載された事項をもとに法的な判断をするのは医師では

なく,事情を知らない裁判官や,後遺障害の審査担当者等の第三者です。

カルテや診断書等にどのような書かれ方をするかによっては,被害者が意図していた内容とは

異なった意味に解釈される可能性があります。

そのため,医師に自己の症状等を伝える際には,医師に適切に伝わるかという点だけでなく,

第三者がカルテや診断書等の記載を読んだ際に,どのように解釈するかという点も意識しておく

必要があります。

 

なかなか難易度の高いものではありますが,これだけは,被害者自身が対応しなければならず,

弁護士が代わりに対応できるものではありません。

被害者自身で頑張っていただかなければなりません。

 

どのような点に注意するべきかは,弁護士等に,事前に確認しておくとよいと思います。

 

交通事故に関する弁護士法人心東京駅法律事務所のサイトはこちら

医師の意見書

交通事故の案件では,被害者が自分の損害が賠償されるべきことについて立証

責任を負います。

 

多くの交通事故事案では争いになりませんが,事故と負傷との因果関係や,

後遺障害の内容,程度について争われた場合等には,医師の意見書を提出

することがあります。

 

被害者側が提出する場合だけでなく,加害者側からも,医師の意見書が提出

されることがあります。

特に訴訟等になった場合には,私の経験上,非常に多くの場合に医師の意見書が

提出されているように感じます。

 

加害者側が提出する意見書は,ほぼすべて被害者に不利な意見が記載されています。

被害者に有利な内容が一部記載されていることもありますが,ごく稀です。

本当に稀に,これで出していいのか?というような意見書が出されることがあり

ますが。。。

 

加害者側から意見書が提出された場合,被害者側の主張を認めさせるためには,

加害者側から提出された意見書の内容を争わなければなりません。

 

争う方法は様々なものがありますが,どの手段を採用するかは,費用対効果の

観点から検討します。

加害者側から先に意見書が提出された場合には,被害者側からも医師の意見書を

提出することが考えられます。

この場合,いずれの意見書の方が信用できるのか,という問題が生じます。

 

被害者側の意見書の作成者が,事故当初から継続して治療を担当していた

主治医である場合には,被害者側の提出した意見書の作成者が,被害者の

身体を直接診察し,治療経過,症状経過等を最もよく把握している主治医

であることを指摘します。

加害者側の意見書に対しては,作成者が,被害者の身体を直接診察したこと

もなく,単にカルテ等書面上の記載だけをもとにして作成されていることを

指摘します。

その上で,情報量の差からして,明らかに,主治医の作成した意見書の方が

信用性が高いことを主張します。

 

あくまでも一つの例ですが,主張はしやすいですし,誰から見ても否定しき

れないものだと思います。

 

ただし,被害者側の意見書の作成者も主治医でない場合には使えません。

主治医の意見書であったとしても,途中で通院先が変更されているなどし,

主治医の診療期間が短い場合には,使いづらくなります。

 

 

主治医以外でも意見書の作成をする医師はいますので,上記の主張が使え

ない場合も増えていると思います。

 

そのような場合には,対応方法を変更しなければなりません。

 

一つの対応方法の例としては,加害者側から提出された意見書を医師に

渡し,そのうえで,医学的観点から反論する意見書の作成を依頼する

方法が考えられます。

 

これにより,加害者側の意見書には,医学的な観点から問題点がある

ことを指摘できます。

被害者側の意見書は,医学的な観点から意見が記載されており,特段

問題点はないので信用でき,相対的に信用性が高いと主張できます。

 

誰が見ても明らかに間違っているような点がある場合には,あえて

医師に意見書の作成を依頼しない場合もあります。

文献等を提出するだけで足りる場合には,文献を提出し,それをもとに

主張するだけの場合もあります。

 

当然,実際の事案に応じて適切な対応方法が何かは変わりますし,

上記の対応をとるにしても,どのような内容にするかは変わります。

 

被害者側の主張に対しては,加害者側から当然反論ができますので,

それにどのように対応するかも事案により変わります。

 

健康保険使用時の治療費の回収方法

交通事故被害に遭った場合,通常,加害者の保険会社がいわゆる一括対応をして

病院の治療費や接骨院・整骨院の施術費等の支払いをします。

当初一括対応がされていた場合であっても,一定期間経過後は,一括対応を終了

される,いわゆる打ち切りがされる場合があります。

打切りがされた場合には,病院の治療費や接骨院・整骨院の施術費について,自由

診療により費用を自己負担する場合や,健康保険,労災保険を使用して治療費の支

払いを行う場合があります。

 

健康保険を使用した場合,第三者行為災害の届をする必要があります。

健康保険を使用した場合,治療費・施術費の7割は,健康保険組合が支払いますが,

通常3割は被害者が窓口で支払います。

 

この窓口負担分はどのように回収したらよいのでしょうか。

一つは,加害者,通常は加害者の加入する任意保険会社に支払わせることが考えられます。

相手方保険会社担当者と話をし,窓口負担をした都度その領収書を送付し,支払いを受けら

れることがあります。

また,全損害についての示談交渉において請求をし,支払いを受けることもあります。

示談交渉により支払いを受けられない場合であっても,調停,裁判,紛争処理センターなどを

利用して支払いを受けられるようにすることもあります。

 

もう一つは,自賠責保険に対しいわゆる被害者請求を行うことが考えられます。

自賠責保険は,傷害分に対して120万円を上限に保険金の支払いをします。

一括対応時に支払われた治療費等の額によっては,総額120万円に達していないことも多々

あります。

そのような場合には,自賠責保険に対して被害者請求をすることで治療費を回収することが

できます。

一括対応時に支払われた金額は,加害者の任意保険会社の担当者に確認します。

 

被害者の方が人身傷害保険に加入されている場合に,人身傷害保険に請求することも理論上

考えられますが,医療照会が必要になるなど,審査に多くの時間を要するため,現実的で

ない場合が多いように感じます。

 

その他,名目上は治療費の回収にはなっていなくても,示談交渉において,慰謝料の額に

ついて交渉する際に,治療費の自己負担分を考慮させることもあります。

被害者の方が加入しているその他の保険から保険金の支払いを受けることで事実上回収

することもあります。

 

負担が一定額を超える場合には,高額医療費の還付制度により一部事実上回収することも

あります。

 

健康保険を使用した際の窓口負担分の治療費の回収方法は,上記に挙げたように,様々な

方法が考えられます。

 

事実上の回収を含めれば,被害者の方の状況によりそれ以外にも方法は考えられると思います。

いろいろと検討してみるとよいと思います。

何が適切か判断がつかない場合には,弁護士に相談するのが良いと思います。

交通事故の案件は,非常に複雑で難しい判断が必要となりますので,相談される際には, 交通

事故を得意とする弁護士に相談するのが良いと思います。

 

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