本日,最高裁判所において,離婚をやむなくされた精神的苦痛に対する慰謝料を
配偶者の不貞相手に対して請求できるかについて判断した判決が出されました。
最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき
事柄である。」とし,「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより
当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に
対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともか
くとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負
うことはないと解される。」としました。
最高裁の考え方によれば,不貞行為があった場合には,不貞行為を理由とした
慰謝料請求はできますが,離婚したことを理由とする慰謝料請求は必ずしもで
きないこととなります。
そのうえで,最高裁は,不貞行為により離婚した場合,不貞相手が不法行為責
任を負うのは,不貞相手が,「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻
関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめ
たものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」と
し,
「夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情が
ない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当」
としています。
最高裁の考え方を前提によれば,離婚に伴う慰謝料が認められるケースはかな
り限定的なものになるように感じます。
通常は,不貞行為に対する慰謝料を請求するため,今回の件と同様の点が問題
となるケースはそれほど多くはないのではないかと思いますが,一定数は同じ
点が問題となることはあると思われます。
その場合には,今後,「特段の事情」の有無が問題になると思われます。
この「特段の事情」が今後の裁判でどのように認定されるかにより,どの程度
離婚に伴う慰謝料の認定可能性があるのかが変わりますので,弁護士としては
気になるところだと思います。