月別アーカイブ: 2023年 9月

解雇理由証明書

従業員を解雇した場合、従業員の求めがあれば、解雇理由証明書を交付しなければなりません。

これは、労基法22条1項に定められた会社の義務です。

 

労基法22条1項は、労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。としています。

これに反して、解雇理由証明書を交付しなかった場合、労基法120条1号により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

解雇理由証明書を交付したとしても、「遅滞なく」交付しなかった場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

この「遅滞なく」とは、事情の許す限りできるだけ早く、というニュアンスで使用されます。

そのため、合理的な理由があれば、遅れも許されるものと考えられます。

ただ、合理的な理由と認められるかの判断は難しく、その判断を誤ると、罰金刑を科されるリスクがあります。

業種によっては、罰金刑を科されることで、各種許可等を取り消される可能性があります。

万が一許可を取り消されると、経営上、相当な影響が出る可能性がありますので、従業員から解雇理由証明書の発行を求められた場合には、できる限り早急に対応するべきでしょう。

着替え時間と給与

未払い賃金に関する相談は、弁護士への相談として比較的多いものです。

 

最近、着替え時間が給与の支払い対象である労働時間に含まれるかが話題になっていました。

着替え時間が労働時間に含まれるか、は比較的以前から問題となっている点であり、いわゆる教科書的な労働法の本にも言及のある論点です。

 

この問題に言及した判例としては、平成12年3月9日の、三菱重工長崎造船所事件が有名です。

この判例では、まさに、更衣の時間が労働時間に含まれるかが問題となっていました。

 

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

この労働時間に該当するかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないとされています。

そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとされています。

この判例では、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていること、その装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたことが指摘され、更衣の時間も労働時間に該当するとされました。

 

最近は私服可の会社も多くありますが、制服等が定められ、着替えることが必須となっている会社もまだまだ少なくありません。

そのような会社では、制服等の指定を継続するのか、継続するとするならば、着替えの時間を労働時間に含めるべきか、等を検討する必要があります。

労働基準法の改正により、未払い給与の請求権の時効は、5年間に延長されています。

当面経過措置により、時効期間は3年とされていますが、仮に5年分の着替え時間について未払い賃金請求がされると、その額はかなりの額になることが予想されます。

それが、全従業員について生じるとなると、会社の経営に与える影響も少なくありませんので、この件は、かなり慎重に考える必要があると思います。

 

不逮捕特権

弁護士登録をしている国会議員も少なくありませんが、国会議員には、不逮捕特権と呼ばれる権利があります。

 

不逮捕特権とは、憲法50条に規定されています。

憲法50条は、「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」としています。

これは、三権分立の考え方からくるもので、行政権や司法権が、立法権を侵害することを回避するために定められているようです。

 

国会議員であれば逮捕されないと思われている方もいるかもしれませんが、そうではありません。

「国会の会期中」とあるとおり、不逮捕特権は、「国会の会期中」に限られています。

また、「法律の定める場合を除いては」とあるとおり、法律の規定により、会期中であっても逮捕される場合があります。

国会法33条で、「各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。」としているのが「法律の定める場合」にあたります。

そのため、院外での現行犯逮捕の場合や院の許諾がある場合には、会期中であっても逮捕されることがあるのです。

 

現職の国会議員が逮捕されることはそれほどあることではありません。

その理由の一つは、不逮捕特権にあるといってよいと思います。

 

自転車と青切符

自転車の交通違反に対する制度が、昨今様々変わっています。

 

少し前に、自転車への赤切符の適用が強化されました。

今年の4月からは、自転車利用者にヘルメット着用の努力義務化がなされました。

そして、自転車の交通違反に対し、青切符を適用することが検討され始めています。

 

青切符とは、比較的軽微な交通違反に対して適用されるものです。

行政手続きとして反則金の納付が通告され、違反者が反則金を納付すれば起訴されない、刑事裁判にならないというものです。

期間内に納付しない場合、起訴され、刑事裁判になる可能性があります。

 

車両の事故は、年々減少傾向にありますが、自転車事故が占める割合は増加していますし、事故件数自体が増加している年もあります。

自転車には、赤切符は適用されていますが、実際に罰則が適用されるケースは少ないという報告もあるようです。

自転車事故を減少させるべく、さらなる取締りの強化が予定されているといえるでしょう。

 

自転車事故は、場合によっては被害者を死亡させたり、重篤な障害を負わせたりする可能性があります。

取締りの強化により、自転車利用者の意識が向上することで、自転車事故が減少することが期待されます。